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6時間後に君は死ぬ (講談社文庫)

6時間後に君は死ぬ (講談社文庫)

かなりおもしろかった。未来におきる非日常的な出来事がビジョンとなって見える予知能力者・山葉圭史をめぐる5つの短編集。長編だと思って買ったんだけど、山葉圭史という登場人物がどの物語にも多かれ少なかれかかわってくるし、最初と最後の物語は話がつながっているので、長編を読んでる気分も多少は味わえた。表題や、あらすじを読んで、サイキックな話なんだろうと読み始めたんだけど、まったく予想ははずれて、涙ぐむ話もあったりして。結末が予想してないところに着地するのも、そうくるのか!とおもしろかった。「恋をしてはいけない日」なんかは特にそうだったな。一番好きだったのは「時の魔法使い」。いろいろな事が上手くいかず、辛いことばかりの主人公未来が子供のころの自分と出会うという話。過去を変える事が出来る、という誘惑を目の前にした時の気持ちの動きがグッときた。「その悲しみも、自分の人生の一部なのだ。今、ここにいる自分を作り上げた、大切な人生の断片。」辛い時には唱えつづけてきた言葉のからくり。未来の未来は描かれずハッピーエンドで終わってはいないんだけど、最初と最後では未来の心のありかたが全然違うんだな、と感じられる、気持ちがあったかくなる終わりかただった。それから最後の「三時間後に僕は死ぬ」。ラストは映像を観てるみたいに、一行一行が大興奮でした。飛んでいく弾丸が見えたよね(笑)
『明日はきっといい日だよ』
未来に起こる事はあらかじめ決められていて、それは運命なんだ。でもささいな事で、その運命も変えていく事ができる。「何も書かれていない日記帳に未来を書きこんでいくのは自分自身なのだ。明日はいい日だと信じて進んで行くしかない。」読み終えたあと、がんばろ、てなんだか思ってしまいました。