先生と僕 (双葉文庫)

先生と僕 (双葉文庫)

「身の周りに起こったちょっとした謎を先生と僕が解き明かしていく」というミステリー。謎自体はたいして込み入ったものではないけど、その先にある真相は、万引・違法売買・盗撮・宗教と、どれをとっても穏やかではなく不穏な空気がただよってました。解説を読むと、「ほんわかした雰囲気で語られはするものの、真相自体は関係者の狡猾さを感じさせる薄ら寒いものが多く、人間の悪意から目を背けないという著者のスタンスが窺える」とあり、なるほど確かに。最初の『先生と僕』は、うーんまた、いまいちな本を選んでしまったか、と思いながら読んでたんだけど、『額縁の裏』『見えない盗品』と読み進めていくうちに、その感じは薄くなっていきました。『額縁の裏』での「嘘でもいい。笑顔で受け入れてくれる人のいる場所が欲しい。急に涼しくなった秋の空の下、そう思う人は案外多いはずだから。」には、確かに自分にもそういう瞬間があるかもしれない、と妙に物悲しくなったりもして。日常の謎、ていえば北村薫さんで、北村さんの書く世界がとても好きな自分にとっては、そうは言ってもやっぱり物足りないな〜なんて思いつつ読んでたんだけど、最後のページで「六の宮の姫君」が出てきた時には、やられた!てなりました。そしてその後の「特別便」。最初の物語と同じ作家?て少し思ったんだけど(笑)、このおまけのおかげで、読後はほんのり爽やかになりました。他の本も読んでみようかな。